こんなにも愛しているのに〜それから

茉里の想い

今頃
樹(たつき)は、シンガポールへの
飛行機の中ね。
もう
そろそろ着くはずかしら。

洗濯物を畳みながら空を見上げて
樹に思いを馳せた。

本当だったら
離婚して、
もう彼と交わらない人生を
送るつもりだったのに。
私の中に
樹を思う気持ちが
ほんのひと握りあって
そこに樹の私への思いがあって
離婚には至らなかった。
結局
至っていない。

離婚に至らず
別居という形に落ち着いている。

別居をしているのは
娘のましろが父親を拒否しているのと
樹がましろと向かい合うことが
できないということも
原因の一つだ。
もちろん
私と今一緒に暮らしたら
私と彼との間に
いろいろな齟齬が生じるに
違いなかった。

なぜなら
ほとんどワンオペ状態で
夫がいないことが通常運転だったのに、
今更
一緒に住んで
さぁ、
これからのことを
お話をしましょう!
とは
スムーズにいかないと思う。

だから
今までの仕事を辞めて
新たに転職した樹に
シンガポール赴任の話が出た時
本人は行きたくなさそうだったが
私は却って
これからのことを考える
いい機会だと言って
後押しをした。

また
現実からの逃避と言われてしまうかも
しれないが
時間も距離も置くことで
見えてくるものもあると、
私は思う。

ただ
私は彼と離婚したいのか
したくないのか。
彼がしたことは到底
許せることではないけど
彼とまるっきりの他人になる
勇気も私にはない。

私も
樹と
時間も距離も離れているところで
ゆっくりとこれからのことを
もちろん
ましろのことも含めて
考えたい。
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