離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
惑う心のゲームマッチ


『受付に流川社長の弟だと名乗る方がお見えになっていますが……。社長に兄弟はおりませんと申し上げたのですが、義理の弟だと言い張って……』


受付から社長室に内線電話が入ったのは、百々花と想いを通わせ合ってから二週間が過ぎたときのことだった。受付の社員は声をひそめ、どう対応したらいいか戸惑う様子が電話越しに伝わる。

間違いない。昌也だろう。

すぐに向かうと告げて電話を切り、千景は受付へ向かった。

昌也だとすれば、いったいなにをしにここへやって来たのだろうか。とはいえ、話の目的は百々花抜きにしてはないだろうが。

エレベーターから降りると、受付から離れた場所に腕組みをして立つ男のうしろ姿があった。
受付の女性社員が戸惑いながら彼を手で指す。それに軽くうなずき返した。

千景の足音に気づいて振り返った顔は、やはり昌也だ。両親に渡した名刺でも見てきたか。


「どうしてここへ?」
「話がある」

< 267 / 301 >

この作品をシェア

pagetop