離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
花に託した最後の願い


百々花の想いが千景に通じてから二週間。幸せな毎日は、結婚当初に提案した〝普通の夫婦〟そのものである。

昌也と千景の父親に認められていない以外は順調といえるだろう。

千景の実家へは仕事の休みを使って通い、除草はもちろん木の剪定も済み、あとは花をもう少し植えれば完了だ。
昌也もあれから二回ほど駆けつけ、百々花の手伝いをあれこれとしていた。決して居心地がいいとは言えない場所だけに、心強い応援である。

それにしても遅いな……。

なかなか帰らない千景を待ちながら、百々花はスマートフォンのメッセージアプリを開いては閉じるのを繰り返していた。
少し遅くなると連絡はあったものの、時刻は午後九時過ぎ。少し遅いという時間でもない。

仕事でなにかあったのかな。

百々花が壁掛け時計を見たときだった。玄関のドアが開けられる音がして、反射的に立ち上がる。


「おかえりな――えっ、昌也くん!? どうしたの!?」


スリッパを鳴らしながら玄関へ向かうと、なんとそこに昌也の姿があった。しかも千景に肩を貸して、彼を支えている。

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