離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

「わかりました。ちょっと様子を見てきます」


少し遠回りにはなるけれど、大事な顧客。(ないがし)ろにしたくない。


「よろしく!」


皆川の声を背に受け、アリアシェリーを後にする。

歩道に出て、駅と反対方向へ足を向けたときだった。すぐ近くで白い車が停車し、そこから降り立った人物を見て、百々花の足が止まる。

千景だったのだ。

小さなアレンジメントフラワーを会社に届けてから一週間が経過していた。

前回ここへ百々花の靴を届けてくれたとき同様、圧倒的な威圧感をまとう千景に、思わず足を一歩うしろへ退く。鋭くも真っすぐな眼差しからは、抗えない魔力めいたものを感じずにはいられない。

その千景が、躊躇うことなく百々花に近づいてくる。

百々花は、まるで王者ライオンに狙いを定められた小鹿のように頼りなさげに立ち尽くすばかり。
ゆらゆらと瞳を揺らしているうちに千景が百々花の目の前にぴたりと足を止めた。
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