恋はポテトと一緒に落ちてくる
柚子の初恋
 私、岬 柚子(みさき ゆず)の初恋は小学校6年生の時。


 4月6日の始業式の日、私は、昇降口に掲示されたクラス名簿を確認して、6年2組の教室に入った。

 黒板には、担任の神山 夕凪(こうやま ゆうな)先生からの「進級おめでとう!」で始まるメッセージとかわいいイラスト。

 そのイラストの吹き出しに「みんなこの席に座ってね。」という台詞と共に、机列( きれつ)表が磁石で貼ってあった。

私の席は…

一番左の一番前。

先生の机の真ん前。

 私がその席で、色鉛筆やはさみなどの道具類を引き出しに片付けていると、隣の席にドンッとランドセルが置かれた。

「おはよう! 柚子ちゃんだよね?」

明るい声で話しかけてきたのは、藤川 翔(ふじかわ しょう)くん。

同じクラスになるのは初めての翔くんは、学年でも人気者で有名な男子。

サッカーが上手で、運動会では、いつもリレー選手。

ドッジボールも上手で、いつも休み時間は、外で人の輪の中心にいる。

 それに引き替え私は、体育は大の苦手。

人見知りだし、仲良くなるまでにとても時間がかかるから、休み時間は教室で読書をして過ごすことが多い。

だから、翔くんは、私の対極にいる人だと思ってた。


「翔…くん? おはよう。」

私は挨拶だけ返す。
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