いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「ああ……でもミニバンって言うのもアリだなぁ」

「ミニバン?」

それがどんな車なのかわからず私が首をかしげると、安藤部長は車体の長い大きな車が展示してある方を指さした。

「わかりやすく言えば、ファミリー向けの大きめの車だな。ミニバンなら荷物をたくさん積めるし、家族が増えてもゆったり乗れる」

「えっ、家族?!」

「家族で旅行したり、キャンプなんかも楽しそうでいいよな」

「ええぇ……?!」

家族が増えるって何?

それって私に、安藤部長の子どもを産めと言うこと?

夫婦になったと言っても形だけで、1年もすれば離婚する約束なのに?

それとも『幸せな新婚さん』の真似事がしたいだけ?

まさか簡単に離婚できないように子どもを作る気なのでは……?

えっ、もしかして『既成事実』ってそのことだったの?

予想外の言葉に驚き、私の頭の中は軽くパニックを起こしている。

安藤部長はそんなことはお構いなしで、楽しそうに私の手を引いてミニバンのコーナーへ向かう。

「これなんかいいな。見た目もカッコいいし」

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