いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「真央がそう言うなら、今はこれで勘弁しといてやるか」

「言っときますけど今だけですよ。もう二度と間違えませんから」

安藤部長と手を繋いで歩くのはやっぱり恥ずかしいけれど、不思議なことに不快感や嫌悪感はなく、私の手をすっぽりと包み込む大きな手に安心感を覚える。

手のひらから伝わってくる安藤部長の体温が心地よくて、このままもう少しこうしていたいような気がした。


それから日が暮れるまで延々と海辺をドライブして、高速道路の入り口の手前にある海鮮食堂で少し早めの夕飯を食べた。

新鮮な刺身を惜しみなく盛り付けた海鮮丼は最高に美味しかったのに、向かいに座っている安藤部長の顔を見ると、砂浜でのキスが頭から離れず、どうしても口元に目が行ってドキドキしてしまう。

海鮮丼を口に運びながら、子どもじゃあるまいし初めてキスをしたわけでもないのに、キスくらいでどうしてこんなにドキドキしてしまうんだろうと考えた。

イケメンだからかなとか、上司だからかもなどとも思ったけれど、それだけではないような気がする。

これまで好きになって付き合っていた人と初めてキスしたときでさえ、こんなにドキドキはしなかった。

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