いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
呼び間違えないようにするには最初から呼ばなければいいのだと思い、あえて名字でも名前でも呼ばないようにしていたのに。

安藤部長は私の魂胆などお見通しだと言わんばかりに、得意気な顔をしている。

これ以上一緒にいると安藤部長のペースに乗せられて、またおかしなことになりかねない。

早いとこお引き取り願おう。

「わかりましたよ、名前で呼べばいいんですね?それではおやすみなさい、創さん。お帰りはあちらです」

仏頂面で淡々とそう言って玄関を手で指し示すと、安藤部長はおかしそうに笑いをこらえながら、私の頭を引き寄せて再び唇にキスをした。

またしてもやられた……!

ちゃんと名前で呼んだのにまたキスされるとは!

「なっ……なんで……」

「よくできました。じゃあおやすみ、また明日な」

余裕の笑みを見せながら帰っていく安藤部長の後ろ姿を見送ったあと、私は両手で顔を覆ってその場にしゃがみ込んだ。

何あれ……?

いきなり押し倒して、本気で落としにかかるとかわけのわからないことを宣言して、名前で呼んでも呼ばなくてもキスするってどういうこと?

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