いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
会社に着くと安藤部長や同僚に挨拶をして、仕事の準備をした。

下手に避けてまた昨日みたいに問い詰められても困るので、安藤部長に呼ばれても淡々と受け答えをして、いつも通りの自分を装う。

元々私は仕事中に無駄話をするタイプではないし、黙々と仕事をしているうちに時間は勝手に過ぎていく。

今日はどんな理由で夕飯を断ろうか。

実家が近ければ『実家に用がある』と言うこともできるけど、実家が遠い私にはそれができないから、友人や同僚と食事をするくらいの理由しか思い浮かばない。

私が滅多に外食をしないことや、いつもまっすぐ家に帰って食事の用意をしていることを安藤部長は知っているから、何日も続けて仕事のあとに誰かと食事をすると怪しまれそうな気がするけれど、体調が悪いと嘘をつくのも気が引ける。

でも今日はやっぱり安藤部長と二人きりにはなりたくないから、なんとか理由をつけて夕飯を断りたい。

何かちょうどいい理由はないだろうか。


定時が近付いても、うまい理由が思い浮かばず焦り始めた頃、出先から戻ってきた安藤部長が私の隣に立って書類の入ったファイルを差し出した。

「小柴さん、事務処理よろしく」

「わかりました」

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