いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
そういえばここ最近は、おかずの作り置きもしていなかったな。

いつも安藤部長と一緒に晩御飯を食べていたから、前日と同じおかずでは物足りないかと思って、毎日献立を考えてきちんと作っていたんだ。

『毎日晩御飯を一緒に食べよう』と言われたときは戸惑ったけれど、いつの間にかそれが当たり前になって、私自身も楽しみになっていたように思う。

ほんの短い期間のことなのに、安藤部長と一緒にゆっくり食事をするのが私の生活の一部のようになっていたのだと知る。

あのままなんの問題もなく毎日二人で食事をして、生活を共にするようになっていたら、酔った勢いだけで結婚した私と安藤部長の関係は、違うものに変わっていただろうか。


木曜日、安藤部長は出張のため朝から不在だった。

帰りは夜遅い時間になるそうで、晩御飯はおそらくどこかで済ませて来ることだろう。

夕飯を断る口実を考えなくて済むと思うと、今日は少し気がラクだ。

定時間際、来訪していた荒木さんの取引先の担当者が帰ったあと、出していたお茶を下げて給湯室で湯飲みを洗った。

湯飲みを洗いながら、明日はどうしようかと考える。

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