いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「つれないねぇ。俺、仮にもあんたの夫だよ?」

「…………は?」

夫って何?

私はあなたと結婚した覚えなんてないんですけど?!

「なんですか、それ?カナダ仕込みの悪質なジョークですか?」

「あれ?心外だなぁ。それも覚えてないの?」

安藤部長は笑いながらそう言うと、仕立ての良い高そうなスーツの胸ポケットから取り出したスマホを操作して、開いた画面を私の方に向ける。

「忘れてるみたいだけどね、あんたはもう小柴 真央じゃない。安藤 真央になったんだよ」

「えっ?!」

あわててそのスマホの画面を見ると、私と安藤部長が記入捺印された婚姻届を手に、殺風景な白い壁の前で笑っている画像が映し出されていた。

こんなものを書いた記憶はない。

それに画像のこの場所はどこだ?

「……なんですか、これ?」

「二人で婚姻届書いて、タクシーで俺の本籍地の役所に行って提出したんだ。夜中だったから守衛室だったけどね。入籍の記念に写真撮ろうってあんたが言ったから、守衛のおじさんに撮ってもらったんだよ」

「えぇっ……?」

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