いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「俺はもっとドキドキすることしたいんだけど……」

「もっとドキドキって……」

創さんは私を抱き上げてベッドに運び、手のひらを重ねて指を絡めた。

そして切れ長の目で私を見つめながら、指先や手の甲、手のひらにゆっくりと唇を押し当てる。

くすぐったさに肩をすくめると、あの夜のように口元のホクロがだんだん近付いて来て、少し薄めの形の良い唇が私の頬や耳に触れ、少しかすれた甘い声で「既成事実、作っちゃおうか」と囁いた。

それから私たちは何度も唇を重ね、お互いの素肌をさらして抱き合った。

創さんは宝物を扱うような優しい手付きで、私の体を隈無く愛でる。

甘い囁きと丁寧な愛撫で柔らかくなった私の心と体の奥が切なくうずいた。

体の奥から押し寄せてくる波にさらわれ溺れてしまいそうな気がして、創さんの背中に腕を回してしがみつく。

今まで誰と体を重ねてもこんな風になったことがなかったので、自分の体が自分のものではないような感覚に戸惑う。

普段の私からは考えられないような甘い声がもれてしまうのが恥ずかしくて、声をこらえながら手の甲で口を押さえると、創さんはその手を取って唇を重ね、貪るように舌を絡めた。

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