いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「明日はせっかく有給取ってるんだし、引っ越しが済んだらとりあえず荷物は置いといて、いろいろ手続き済ませて来れば?役所とか、平日しか開いてないとこがあるだろ?」

「そうですね。そうします」

役所で退出と転入の届けを出して、パスポートや銀行口座などの名義と住所を変更して……時間が足りるかはわからないけど、明日のうちにできることは済ませておこう。

「明日は名前間違えるなよ、奥さん」

そう言って創さんは少しいたずらっぽい笑みを浮かべ、おやすみのキスをして少し名残惜しそうに帰っていった。

いつもより少し早めに入浴を済ませ、使い終わったシャンプーやコンディショナーなどの水気を拭き取り、二重にしたビニール袋に入れて段ボール箱に詰め込む。

明日の段取りを考えながら床に就くと、布団から微かに創さんの匂いがした。

愛し合った余韻が残る布団にくるまって目を閉じると、創さんの甘い声や息遣い、私の肌に触れた創さんの手や唇の感触まで蘇り、体の奥が切なくうずく。

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