いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
マンションに戻った私は、創さんのいない部屋でうろうろと歩き回っていた。

創さんに聞かなければ荷物をどこにしまえばいいのかもわからないし、何かしようにも部屋のものを勝手に触るのは気が引ける。

しかたがないので創さんが帰ってくるのをおとなしく待っていようと思っても、こんな広い部屋ではどこに座っていればいいのかもわからず、まったくもって落ち着かない。

この部屋での私はまだ、完全なるお客さんだ。

早く帰ってこないかな。

時計を見ると、定時を過ぎてからまだ30分ほどしか経っていない。

やっぱり買い物をしてくれば良かったなと思いながら大きなソファーの端っこに腰を下ろした。

見るからに高そうなソファーの座り心地は最高に気持ちよくて、慌ただしかった今日の疲れからか、だんだん眠くなってきた。

何度も寝入りそうになるたびに必死で睡魔と闘ったけれど、暇を持て余していることもあり、抵抗も虚しく睡魔との闘いにあっさりと敗れてしまう。

なんとか起きて創さんを出迎えなければと頭では思いながらも、重くなったまぶたを開くことができず、ソファーの肘掛けに体の重みを預けた。


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