いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
１階に着きエレベーターを降りて少し歩いたところで、優花がビルの正面玄関口へ向かう方向から少し向きを変える。

「小柴さん、ちょっと化粧直したいんですけど、いいですか？」

「ああ……うん、いいよ」

優花のおかげで、とても自然な流れで航太から離れることができた。

いくら航太でも、さすがに女子トイレの前で待つことはできないだろう。

女子トイレに入って扉を閉めると、優花は鏡の前で化粧ポーチを取り出し、声を潜めて話し始める。

「とりあえず一旦離れることはできたけど……おそらくどこか別の場所で待って、小柴さんのあとをつけるつもりなんでしょうね」

「その言い方、ストーカーみたいでなんか怖いんだけど……」

「みたいじゃなくて、ストーカーなんですよ。相手は小柴さんの引っ越し先を知らないんですよね？あとをつけて突き止めて、お金をたかるつもりなんじゃないですか？」

もし仮にそうだとしたら、航太には何がなんでもまとまったお金を用意しなければならないような、差し迫った事情があると言うことだ。

< 408 / 991 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop