いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「平日なのに急に呼び立ててごめんね」

「いえ、大丈夫です。先日は素敵なマフラーをありがとうございました」

池崎課長夫妻の結婚記念日にいただいた箱の中身は、とても手触りの良いカシミア製のブランド物のマフラーだった。

私は大学に入って初めての冬に買った安物のマフラーをずっと使っていて、ずいぶん年季が入って傷んできたので、そろそろ新調しなければと思いながらも『まだ使えるからもう少しだけ』と何年もやり過ごしてきた。

だけど『今年こそは!』と思っていたタイミングで、自分では絶対に選ばない高価なマフラーをいただいたことは、頑張ってきた自分へのご褒美のように思えてとても嬉しかった。

「気に入ってもらえた?」

「はい、とても!素敵すぎて使うのがもったいないくらいです!」

「喜んでくれて良かった!ぜひ使ってね」

「大事に使わせていただきます」

未来さんは車を運転しながら、昔から妹が欲しかったから私とは本当の姉妹のように仲良くしたいと言った。

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