いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
あのビルの中でこれから航太の身に何が起こるのかはわからないけれど、これもすべて航太の蒔いた種、自業自得だ。

こんな怪しいところにいたら、私までいかがわしい店の客と間違われるか、『簡単な接客をしてみない?』などと勧誘されるかのどちらかだから、早いとこ退散しなければ。

私はあわてて踵を返し、急ぎ足で引き返した。



土曜日の朝、私は電車に乗ってお料理コンテストの会場に向かっていた。

創さんは一度会社に寄って、少し用を済ませてから会場に向かうそうだ。

彩名と果歩とは、会場で落ち合うことになっている。

昨日は仕事のあとに、二人で料理の練習をするんだと張り切っていたけれど、うまくいっただろうか。

電車を降り、改札を出て会場に向かって歩いていると、少し前を歩いていた年配の女性の歩様がおかしいことに気付いた。

だんだん歩く速度が遅くなり、少しふらついているように見える。

土曜日の朝のまだ早い時間だからか、通りを歩いている人の姿は少なく、女性の様子がおかしいことに気付いている人は私以外にはいなさそうだ。

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