いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
創さんは何度か小さくうなずき、ポケットからスマホを取り出して電話をかける。

そして今日は取引先の社長との付き合いで帰りが遅くなると嘘をつき、結婚式のことについてはさきほど池崎課長に言われた通りに話した。

「ああ……ちゃんと考えてるから大丈夫だよ。それは自分の口から報告する」

創さんはお父さんとの短いやり取りを終えて電話を切ると、ニヤッと笑った。

「うまくいった……!」

話によると、創さんのお父さんは予想通り、創立70周年記念パーティーのときに、次期社長が創さんであることと、創さんと東さんの婚約を発表する場を設けるつもりでいたらしい。

結婚式の相談をする相手も、婚約を発表する予定の相手も、東さんだとは一言も言わずに、自分の口から報告すると創さんが言うと、お父さんは『だったらこの件は創に任せる』と言ったそうだ。

「もう入籍は済んでるから、発表するのは婚約じゃないけどな。社員のみんなの前で『真央と結婚した』って言うつもりだ」

「よし、おまえにしちゃ上出来だ」

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