いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「んー?さっきから気になってたけど、なんて呼ぶのかもう忘れたのかな?」

「す……すみまひぇん、創ひゃん……」

安藤部長は私の頬から手を離し、その指先で私の唇をふにゅっと押さえた。

「次から間違えたらキスしてやるからな」

「もう二度と間違えません」

「ふーん、そうきたか。そのうち真央の方から『キスして』って言わせてやる」

なんで私がこの人にキスをせがまにゃならんのだ!

そんなことするわけがないと思ったけれど、よく考えたら金曜の夜は一緒に寝ていても本当に何もなかったんだろうか?

一度気になり始めると、ハッキリしないのはどうしても気持ちが悪い。

「つかぬことをお聞きしますが……金曜の夜は、何もなかったんですよね?」

私がためらいがちに尋ねると、安藤部長は傾けかけていたビールのグラスをテーブルに置いて、少し身を乗り出した。

「さぁ?どっちだと思う?」

「どっちだかわからないから聞いてるんです」

「じゃあ思い出させてやろうか?真央は覚えてなくても、真央の体は覚えてると思うぞ」

私の体は覚えてるってなんなの?!

なんかすごくやらしいんですけど!

安藤部長の部屋で目覚めたとき、体に違和感はなかったから、最後まではしていないと思う。

……いや、待てよ?

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