いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
さっきの写真でも私の胸元ははだけていたし、最後まではしていなくても、ある程度のところまではしたってこと?

もしかしたら目の前にいるこの人に身体中を撫で回されたりしたのかと思うと、急激に恥ずかしくなって確かめるのが怖くなってしまった。

「……それは遠慮しときます」

「夫婦なんだから遠慮なんかしなくてもいいのに」

夫婦として一緒に暮らすと言うことは、キスどころか体の関係まで強要されるの?

いくら戸籍上は夫になったとは言え、好きでもなんでもない人とそんなことをするなんて、私には絶対に無理だ。

「とりあえず真央は早いとこ今住んでる部屋引き払ってうちに来い。今後のことはそれからゆっくり考えよう」

「お願いがあるんですけど……寝床だけは別にしてもらえます?」

「却下。俺は夫婦は一緒に寝る派だ」

これからどうなってしまうのか不安しかないけれど、酔って結婚してしまったのは私の落ち度でしかないし、弱味を握られているのだから、逆らうことも後戻りすることもできない。

社内恋愛なんか二度としないと心に誓ったところなのに、まさか職場結婚をしてしまうとは一生の不覚だ!

妙な情が湧かないように淡々と事務的に生活して、私のことは面白くもなんともないとわかってもらって、できる限り早く離婚してもらいたい。

とりあえず今は、一日も早く元の平穏な生活を取り戻すことだけを考えよう。


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