いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─

呆れた私は【既読】のマークがついたであろうそのメッセージには返信せず、休憩後の仕事を黙々と片付け、定時のチャイムと共に席を立った。

会社を出て駅に向かって歩いていると、バッグの中でスマホからトークの通知音が鳴った。

信号待ちの間にトークアプリを開いて確認すると、メッセージは安藤部長からだった。

【調子に乗って悪かった。謝るから機嫌直して】

珍しく素直と言うか、弱気なメッセージに吹き出しそうになる。

あのメッセージを既読スルーしたあと、安藤部長に呼ばれて仕事の話をしていたときに、私は仏頂面をして淡々と受け答えをしたので、怒っていると思ったらしい。

いつも振り回されてばかりだから、たまには私も少しくらい意地悪をしてみようかと考える。

【来ていただいても、ご希望のものはお出しできません】

駅で電車を待ちながら、しばらく考えてメッセージを返すと瞬く間に返信が届いた。

【ごめんなさい。お茶漬けでもなんでもいいから、真央の手料理を食べさせてください】

子どもみたいなメッセージに思わず声を出して笑いそうになり、必死で笑いをこらえた。

いつもは偉そうにしているけれど、けっこう可愛いとこもあるんだな。