いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「真央、忘れ物」

「え?」

ハンカチも財布もスマホも持ったし、ポケットティッシュや化粧ポーチもちゃんとバッグに入れたはずなのに、私は何を忘れているんだろう?

「何も忘れてませんけど……」

「忘れてるだろ?」

創さんは少し呆れたようにそう言って私の頭を引き寄せ、鼻先が当たりそうなほどに顔を近付けた。

「大事なもん忘れんなよ、奥さん」

忘れ物って……キスのことか……!

この家から出勤するのは数日ぶりだからすっかり油断していたけれど、相変わらず私の夫は朝から激甘だ。

すっかり仕事モードになっていたところに不意打ちを食らった私の心臓は、とてつもなく速いペースで鼓動を鳴らしている。

「ほら、早くしないと雲雀が来るよ?」

「えっ……私から?」

「当然」

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