副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「そう言われてしまうと……ですが、私自身、結婚は政略的なものや妥協ではなく、恋愛結婚をしたいと、年甲斐になく思っているのです。ただ、今はその時間も持てません。
それに、身近な人に頼むのは、親族にも知られている方が多くて、外野が勝手に話を進めてしまうことも考えられます。
その点、佐山さんは知り合ったばかりの取引先の方で、親族には知られていません。おまけに、昔の知り合いという、出会いのベースもあります。ですから、ぜひお願いしたいのです」

「そう言われましても……」

「もちろん、佐山さんにもメリットがないといけませんね。一応、副社長という立場で、仕事柄それなりの人脈もあります。ですので、あなたのご実家方面で、仕事を紹介することも可能だと思います」

「えっ……」

正直、ちょっと魅力的な提案だ。
母の言う通り、実家の方では、持っているスキルを生かせる仕事をる見つけるのも難しいだろう。

父を亡くして苦労してきた母を見てきたからこそ、私は一人でも十分に生きていける仕事に就いていたい。
それはもちろん、結婚してからも続けられるものがいい。
まあ、結婚の予定は全くないのだけれど……

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