三月はいなくなる子が多いから
ただ、その転校生は確かにいた。

彼女が誠華学園から転校する日、
私にプレゼントと
とある忠告を残していった。


プレゼントは私の部屋の棚に置いてある。


「麻衣は子供だから苦くないように作ったわ。
あなたが人生においてもっとも重要な判断を迫られたとき、
瓶の中のものを飲みなさい」

その小さく綺麗な小瓶を渡しながら忠告をした。


「いい忘れないで……

三月はいなくなる子が多いから

❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎」


忘れないでと転入生は確かに言っていたのに
私もう忘れてしまっている。


名前も忘れてしまったし、
顔だって……、どうしても思い出せない。


ただ棚にポツンと置かれている小瓶のおかげで
彼女がいたという思い出だけはまだ忘れずにいられるのかもしれない。
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