Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
「マスター。シャンパンを」
手を上げて注文している横顔を思わず凝視する。あどけないなとは思っていたが、こなれた所作に完全に騙されていた。ホテルに着いた時からなんだかVIP扱いだし、BARも顔パスって感じだし・・・まさか未成年だなんて。
「ちょっ、ちょちょ! 未成年はお酒「亜子ちゃんの、だよ」
すっと伸びてきた匠くんの指先が私の髪を梳きながら、手の平で頬を撫でられる。それが「まあ、まあ」という意味合いなのであっても、十八歳の青春真っ盛りの男の子がする仕草じゃありません! 先程まで胸をときめかせていた自分が恥ずかしい。十歳程も離れた「年下の男の子に惑わされていただなんて。って、思ってる?」
「・・・」
「図星って顔してる」
匠くんのまん丸の可愛い目が、獲物を狙う猫の目になった気がした。ぞくりと肩甲骨のあたりが騒ぎ、ごくりと喉が鳴る。顔を逸らしたくても、頬を撫でる手がそれを許してくれそうにない。
もしかして、もしかすると、これは新手の逆美人局なのかもしれない。超VIPな美人局。そうなのだとしたら、どうして見るからに貧乏そうな私をターゲットにしたんですか・・・。
「なんかちょっと違うこと考えてない?」
「えっ、あっ・・・私、お金持ってないです」
「お金?」
「私、しがない派遣社員なので匠くんを買うほどのお金ないです」
「飼う?」
「買わない」
「飼わない」
「買わない」
「___ペット?」
「ペット?」
「___わん」
「・・・ふふふ」
お互いに首を傾げながら、「わん」と鳴いた匠くんが可愛くて思わず吹き出していた。猫みたいだと言ったのは前言撤回。匠くんは可愛いプードルだ。
「なんか違う。亜子ちゃん勘違いしてる」
「匠くんこそ」
「とにかく、僕は亜子ちゃんを騙そうだとか悪い事は考えてないよ」
「___本当?」
「うん。食べたいとは思っているけど」
「たっ、食べ「お待たせ致しました」
ナイスタイミングなのかバッドタイミングというべきか、マスターが運んできてくれたグラスの中で黄金に輝くシャンパンから細かな泡が立ち昇っていた。匠くんの前にはアイスティが置かれる。
「では、僕らの出会いに乾杯」
「___乾杯」