副社長の初めての相手は誰?

「じゃあ教えてあげるね。実はね、私と忍は産まれる前の記憶があるの」

「産まれる前の記憶? 」

「うん。お母さんの事を選んで、私と忍は産まれて来たんだけどね。お父さんとお母さんが、離れ離れになっちゃっているから。引き合わせてあげようって、忍と約束したの。それでね、私はお父さんを護る為に、あの春美さんにテレパシーを送って、誘拐してもらったんだよ」


 え…

 ちょっと驚いて、希歩は絢を見た。


 絢はいつもと変わらない顔で希歩を見ていた。


「驚いた? 」

「う…ん…」


「春美さんがお父さんと、一緒にアメリカに来たのも偶然じゃなく。そうしてもらったの。そして、お父さんがちゃんと養女として私を引き取ってくれるように、お父さんにもテレパシーでお願いしていたの。だからお父さんは、ちゃんと私を養女として引き取ってくれたんだよ」


 何かのおとぎ話しにしては、ちょっとリアルすぎる…。

 絢は嘘は言っていない…。

 希歩は絢の話を聞いていると不思議な気持ちを感じた。



「忍はね、男の子だから、お母さんの傍に残って護るって言ったの。でもね、離れていてもちゃんと忍とはテレパシーで話していたんだよ。お母さんの顔もちゃんと教えてくれたよ。ずっと、お母さんが私を探していることも教えてくれていたの。だけど、会うの時は決めていたから。それまでは私も忍も動けなかったから。…ごめんね、10年もかかってしまって」

「…そんな…」


「本当はね、忍と会うのは病院の翌日って決めていたの。だけど、忍が1日早く来ちゃったんだよね。なんかね、お父さんに甘えたかったみたいなの。ずっと、お父さんい会いたいって私には言っていたから」


「…そうなのね…」


「忍とまた会ったら、絶対にお父さんとお母さんを、引き合わせようって約束してたの。だって、忍も私も。お父さんとお母さんを選んで、産まれて来たんだもん」


 なんとなく希歩の胸に込みあがってくるものを感じた。
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