副社長の初めての相手は誰?


 子供が出来て、まさか双子だとは思わなかった。

 1人でも育てるのが大変なのに、2人も育ててゆけるだろうか? 


 希歩はちょっと不安を抱えていたが、海斗の協力もあり無事に出産できた。

 産まれてきた双子は、忍は希歩に似ていて、絢は優輝に似ていた。


 そんな2人を見ると、希歩は嬉しくて胸がいっぱいだった。



 絢が誘拐されて、ショックを受けた希歩だったが残された忍が唯一心の支えだった。


「お母さん。もう、素直になってね。お父さんの事、今でも大好きでしょう? 」

「絢…」

「お父さん、ずっとお母さんの事探していたんだよ。時々、写真見て泣いていたの見たことあるよ。そんなお父さん見てたから、私、どんなに酷い事されても我慢できたの」


 子供達が、そんな事を決めて産まれてきてくれたなんて。

 私が素直にならなくては、きっと絢と忍がここまでしてくれた事が水の泡になってしまう。

 あの人が…優輝さんが今でも好き…。


 希歩は今の自分の気持ちを素直に認めた。





 ピンポーン。

 チャイムが鳴り、希歩はモニターを見た。


「え? …」


 モニターには優輝が映っていた。


「どうして? 」


 驚いている希歩の傍に、絢が寄ってきた。


「あれ? お父さんだ。お母さん、入れてあげていい? 」

「あ…うん…」


 施錠を空ける希歩。

「どうぞ…」


 ふと、希歩自分の姿を見た。

 家の中だからラフなティーシャツに、ラフなハーフパンツ、そしてエプロンをしている。

 そんな自分の姿を見て、どうしよう? と戸惑った顔をした。


「お母さん? どうしたの? 」

「あ…いや、あのね…」

「ん? もしかして、オシャレしたくなったの? 」

「ち・違うわよ。ただ…お客様が来たのに、こんな格好でいいのかな? って思っただけ」

「ふーん。でもいいんじゃない? お父さんはお客様じゃないもの。そのまんまのお母さんでいいと思うよ」


 ピンポーン。

 再びチャイムが鳴ると、希歩はちょっとボサボサの髪を整えて玄関に向かった。

 そんな希歩を見て、絢はクスッと笑った。
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