揺蕩いの桜の下で君想ふ
バシッ

私の頬に痛みが走る。一瞬で、陽子ちゃんに叩かれたのだと理解する。

「結桜くんは、こいつのどこが良いのかしら……」

そう言って陽子ちゃんは、私の胸ぐらを掴んだ。

怖いよ……誰か……。

「おい!小春を離せ!!」

結桜の声が聞こえる。私たちは、声がした方を見た。

「結桜……」

結桜が陽子ちゃんを睨みつけ、立っていた。陽子ちゃんは、私を離す。

「俺、平気で人を傷つけるやつ嫌いだ……お前、今度小春に手を出してみろ。ただじゃすまさんぞ」

結桜は、珍しく声を低くして言った。そして、私に近づくと「大丈夫?」と微笑む。

「……何で結桜くんは、そんな奴が好きなの!?」

陽子ちゃんが、結桜に叫んだ。結桜は、陽子ちゃんを睨んだ後、口を開く。

「……君に惚れ心に残り桜咲く君に伝える春の温もり」

結桜は、私に告白した時に詠んだ短歌を言った。陽子ちゃんは、驚いた様子で結桜を見る。

「これ、昔に俺が作った短歌だよ。意味は、私は、春のような温かさに触れて、春のような君に惚れた。その事が頭から離れず、私は、次第に春のような君と話すことが増えていって、とても嬉しい。春になったら、綺麗に咲く桜のように。いつか、君に伝えたいんだ。この思いを……ってこと」

……初めて結桜と話したのは、中一の春だっけ……一人でいた結桜に、私は話しかけたんだった……。
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