夜空に君という名のスピカを探して。
『奇跡が起きて、私たちはずっと一緒に……』


 彼に書いてほしい言葉を伝えながら、考える。

物語は星に願ったら奇跡が起きて、幽霊だった私に身体が与えられるという流れになった。

そして、宙くんとずっと一緒にいられるという幸せな結末を迎える。

 だけど、どうしてだろう。

胸に残るのは違和感だ。

こんな終わり方で、本当にいいのだろうか。

なにかが、引っかかっている。

 私たちの出会いを、これからの未来を、奇跡というひと言でまとめてしまってもいいのだろうか。

委ねるものではなくて、私たちが共に選びとったものが、今なのではないのだろうか。

それはきっと、悲しい結末かもしれない。

でも、私たちが精一杯生きた証だ。


『宙くん……』

「なんとなく、楓が言いたいことが分かる。このラストは嘘ばっかだ」

『だよね……。ねぇ、私はたとえ自分が消えるんだとしても、宙くんと出会えたから幽霊になったことは後悔してないよ』


 ううん、君と出会えたからこそ、死んだことに絶望しないで済んだ。

君と過ごした時間は、私に喪失感以上の感情、誰かをこんなにも愛する幸せをくれたのだ。


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