【短編】STARTー恋ver.ー
「そう…ですね、また会いましたね」
初めて彼女を間近で見る。
近くで見れば、あの時に見た姿がよりはっきりとわかる。
年齢が近いように思えるけれど、実際はそうか分からない。
だから敬語になってしまった。
『桜、好き?』
「あ、はい…」
変に緊張して、ちょっと無愛想な答え方になってしまった。
けれども彼女は、『綺麗、だよね』と静かに言った。
しばらくの間、
どちらかがしゃべることもなくて。
ただただ彼女も俺も
桜の木を眺めていた。
ただ、風が通り抜けるだけ。
それだけの空間だけれど、何故か心地よくて。
このまま、時間が止まればいい。
そう思った。