【短編】STARTー恋ver.ー
桜を見上げていた彼女の視線が、ゆっくりとこっちに向く。
ニコッと笑って、そしてこっちへ向かってゆっくりと歩いてくる彼女。
彼女が一歩近づくごとに、少し緊張する。
やがて彼女の足が止まる。
『あの時の、男の子』
そう言って、俺に向かって微笑んだ。
「あっ、え、えっと...」
不意打ちの言葉と笑顔に、頭が混乱してうまくしゃべれない。
『2度目だね…』
そう言って彼女はまた桜の木を見上げた。
俺のこと、覚えててくれたんだ。
よかった。