悔しいけど好き
ん…

意識が浮上し手の温もりと肩の重みに隣を見ればしっかり手を繋ぎ俺の肩に持たれ凪が寝ていた。
ふっと愛しくて頬を緩ませていると奴から声がかかる。

「あ、起きたかい?もう少しで家に着くよ」

「はあ…どうも」

つい剣呑にミラー越しに映る奴を見てしまう。

「ふふ、そんな顔を見るともっと苛めてみたくなるな」

「はあ?」

凪の前では優しそうなお兄さんを装ってる顔がにやりと不敵に笑う。
明らかに挑戦的なその顔に俺も身構えた。

「何ですか?」

「君は本当に凪の事好きなのかい?」

「そりゃ、もちろん」

「じゃあ、覚えておいてくれ。もし、凪を泣かせるようなことがあったら海里が許しても俺が許さないから」

「泣かしたりしませんし、余計なお世話です」

「そう…。ああ、君は俺と凪のこと知ってるんだったね?」

「…」

「凪にとって俺が初めての相手だったけど、俺にとっても凪が初めてだったんだ」

「は…」

絶句で何も言えない。
何を言い出すんだ奴は…。

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