悔しいけど好き
「……何言ってるんですか?私たちの事有名かは知りませんが、浮ついたことはしていません。ちゃんとプライベートと仕事は分けてます。荒川さんにそんな事言われる筋合いありません」

思わず言い返した。
私達は約束した。仕事とプライベートは分け、けじめをつけて仕事はちゃんとやってる。
仕事上関わりは多いから色々噂は立つだろうけど、謂れの無いことで咎められるのは我慢できない。
まして、荒川さんは噂の疎い私でも知ってるほど鷹臣の事が好きだと公言し会社で告白しキスまでしてる。
誰も見ていないとはいえ荒川さんの方がよっぽど仕事とプライベートをごっちゃにしてると思う。

「何よ…いい子ぶっちゃって…」

言い返されて少し驚いた顔をした彼女は悔しそうに顔を歪めた。
そんな顔もやっぱり美人だから羨ましいとか思っちゃう。
まだ鷹臣の事好きなんだろうな。
こんな私が彼女だって納得できないのかも。
何か偉そうに同情してしまう。

「鷹臣の事忘れられませんか?あなたならもっといい人いるだろうに…」

「っ!…あなたにそんな同情されたくない!」

今のは失言だった。
そう気づいたときには目の前に茶色い液体が飛んできて咄嗟に左手で庇うもガッツリかかってしまった。

「あつっ!?」

持ってたココアも手放して一番かかった左腕を抑える。
胸のあたりも茶色く汚れ熱い。

「あ…私…」

ハッとしたような顔をする荒川さんは茶色の液体の中に佇む私を見て後ずさりし走って逃げていった。

「………あ~あ、やっちゃった…」

床の惨状と自分の失言にジンジンとしてくる左手を押えながら呆然とした。
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