悔しいけど好き

「どうしたらそんなことになるんだよ?」

鍵を渡しながら聞いてくる鷹臣に笑って誤魔化す。

「たまにコーヒーでも飲もうと思ったらこぼしちゃって」

「コーヒー?」

「あっすぐに着替えて戻らないと!家が近いってこういう時便利よね!鷹臣もすぐ出るでしょ?必要書類は机の上にあるから!じゃあね!行ってらっしゃい!」

「あっ凪!」

訝しげに見る鷹臣に捲し立てて小走りに逃げ出した。
会社を出て自分のマンションに着くとやっとホッとする。
そう言えば鷹臣の背広着てきちゃった。
今日は暑いから背広が無くても大丈夫かな?
お蔭ですれ違う人に怪しまれないで来れた。
鷹臣の匂いのする背広と自分のコーヒーの匂いが混ざってちょっと癒される。
コーヒーは飲むのは苦手だけど匂いは嫌いじゃない。
でもシミになっちゃうかな?結構気に入ってたブラウスなのに。

家に入り汚れた服を軽く洗い漬け置きしておく。
素早く着替え腕を少しの間流水で冷やし状態を見る。
少し赤くなってるけど酷い感じではない。痛みはあるけど大丈夫だろう。
薄手のカーディガンを着て腕を隠し鷹臣の背広を持って会社に戻った。

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