悔しいけど好き
いつもは凪がいるはずの部屋に入り電気を点ける。
凪の部屋に本人がいないだけで寒々しい感じがするのは俺の気のせいか?
力なくテーブルにコンビニで買った弁当を置いてソファーに座る。

いつも凪が用意してくれる食事は温かくて美味くて幸せにしてくれる。
コンビニ弁当も暖めればそれとなく美味いはずなのに味気なく感じてしまう。

「もう俺、凪無しでは生きていけないかも…」

ポツリと溢した言葉が凪の部屋に落ちて消えていく。
たまに稲葉と飲みに行くこともあるから凪がいないこの部屋に一人でいることは初めてでも無いのに、最近の凪の態度に寂しさが募った。

凪は何をそんなに悩んでいるんだろう?
仕事は凪のお陰で軌道に乗って順調そのもの。
凪の体調もいいし来年にはまた営業に返り咲くだろう。
アシスタントとしての凪は頼りになるからほんとはこのまま俺のアシスタントを続けて欲しい気持ちもある。
けど、凪に返すために凪の担当先を全て受け持ったんだ。
本来ならさすがの俺でもパンク寸前でもおかしくはない仕事量だ。
今は順調でもいつかはキャパオーバーになってしまう。
そうなる前にちゃんと凪に返したい。

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