悔しいけど好き

「早速これ、資料の作成しといて」

どっさりと机に置かれたファイルの束。
目を丸くして見上げれば奴のいつものニヤリとした顔。

「夕方までには帰るからそれまでによろしく。じゃ」

会議が終わり、机に戻った途端に神城に言い渡され、奴は颯爽と新年度の挨拶回りに行ってしまった。
私はまだこの間の文句を言ってないのに！
キリキリといない奴の机を睨みつけて早速アシスタントを引き受けた後悔に苛まされる。
そこに肩を叩かれ上を見れば正木部長の爽やかな笑顔。

「羽柴、今までやってきた営業のスキルがあるから資料作りも御手のものだろ？神城を助けてやってくれな？」

「はあ…」

曖昧に返事をすれば、じゃ、俺も行ってくると出かけてしまった。
はあ、憧れの正木部長の笑顔が見れるのはいいけど結局私は流されてるだけじゃなかろうか…？

先が思いやられると落ち込みファイルの束を手に取った。