悔しいけど好き
「よっ、資料出来たか?」

「出来たわよ!」

言った通りに夕方帰ってきた神城に出来上がったばかりの資料を手渡す。

「お、あの量を既に出来てるとは上出来上出来」

心の籠ってない褒め言葉を言いながら椅子に座り早速私の作った資料をめくり出す。
その様子を私は目を細めじっと見ていた。

フムフムと確認しながら次のページをめくった神城がピキッと一瞬固まったのを私は見逃さなかった。
ふふんと鼻を鳴らししたり顔で見ていると、私の目線に気付いた神城がん”ん”っと咳払いをして次のページをめくり出す。

「ぶふっ…」

今度は吹き出そうとして無理に止めるから変な音が口から飛び出す。
周りにいた人たちが何事かと神城を見た。

奴は何でもない顔をしてまたページをめくって、今度は私をギロリと睨む。
私はふいっとよそ見をして知らん顔をする。

そしてまたページをめくる音。
そーっと様子を見てみると今度は顔をヒクつかせている。

ふっふっふっ、してやったり。
得意げな顔をしているとまた咳払いをした神城はとんとんと資料を整え、はあっとため息を付いた。

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