悔しいけど好き
・・・・・


嬉々とした顔で帰って行く凪を不思議に思いながら俺も後から追い掛けるように凪の部屋に向かった。
不用心にも鍵の開いてるドアを開け注意してやらねばと部屋に入ると話し声が聞こえる。

「……幸せならそれでいいって思える。それでもずっと愛してる。私もとうとう真実の愛ってものを知ってしまったかも……なんてね」

窓際に立つ電話をしてるらしい凪の後ろ姿。
いったい誰に、愛の告白なんてしてるんだ?

「周くん?」

奴の名前を聞いた途端に持ってた鞄は手から離れ頭に血が上った。
振り向いた凪は驚いた顔をしている。
でも俺に聞かれたことを何とも思ってないのか焦りは見えない。
凪にとって俺はそれだけの男だったということか?

「今の言葉は本心か?」

「え?」

「やっぱり凪は奴が忘れられないのか?俺がどんなに想っても奴には勝てないのか?」

「たっ、鷹臣?」

ズカズカと近付いて凪の両肩を掴み尋問する。手から滑り落ちたスマホから憎らしいあいつの声が聞こえた。

「どうした凪?大丈夫か?」

凪の心に潜む奴に嫉妬し肩を掴む手に力が籠る。

「いたい…」

顔を顰めて呟いた凪に俺はハッとして手を離した。
また俺は嫉妬に駆られて凪を傷つけようとしている。
二度と傷つける様なことはしないとあんなに誓ったのにあっさりとその誓いを破ろうとした自分に恐れ戦く。

「また…俺は…」

このまま凪の傍に居ると何をしでかすかわからない。
頭の中はぐちゃぐちゃで、ごめんとやっと呟いて逃げるように部屋を出た。
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