悔しいけど好き
[あの時、鷹臣の事を話してた。私は鷹臣が好き、例え別れることになっても愛してるって言ったの]

「凪…」

本当に?
思わず凪の声を聴きたくなって電話をした。
コール一回ですぐに繋がり凪の声が聞こえる。


「もしもし、鷹臣?」

「凪…本当か?」

「そうよ、何誤解してるんだか知らないけど、鷹臣の話をしてたの」

「ごめん、俺てっきり…」

「周くんとのことは過去の事だって言ったでしょ?私の言ったこと信じられないの?」

「そうはいっても忘れられないんじゃないかって思ってた…あいつも…」

「私はのめり込みやすくて一途なの。同時に二人を愛するなんて出来ないから」

「凪…」

「ねえ、帰ってきて?ちゃんと会って話そう」

優しく聡す凪の申し出に言葉が詰まる。
愛しくて恋しくて今すぐ会いたい。
でも今の自分では凪を壊してしまいそうで躊躇する。

「…ごめん、今は一人で頭を冷やしたいんだ。じゃないとまた凪を傷つけてしまいそうで…」

「…そう…じゃあいいわ、少し一人で反省しなさい。私を疑ったことを特に反省してよね」

「う…はい…」

釘を刺され返事をすると満足したのかふふっと笑い声が漏れ聞こえた。
嫉妬に狂いそうになった俺をこうもすんなり大人しくさせる凪に頭が上がらない。

「あ、そうそう、今日周くんと電話をしたのはね…」

とは言え、この期に及んで奴の名前を出してきてちょっとムッとした。
そう言えば帰り際嬉しそうに帰っていったのは奴と電話するためだったのかと思い当たる。

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