悔しいけど好き
……

どれだけ泣いていたかわからない。
泣き疲れてお風呂から出てあのピンクのバスローブを着たところで力尽き座り込んだ。
洗面所は真っ暗で後ろに点いてるバスルームの明かりが自分の影を作りぼーっとその動かない影を見つめていた。

暫くするとまだ聞こえる雷鳴とガチャガチャドタドタ音がしてビクリと肩が揺れる。

「凪?……凪っ!…どこだ?」

足音らしい音は通り過ぎ戻ってくるとがちゃりとバスルームが開けられる。
その瞬間にまたピカッと辺りが明るくなり雷鳴が轟いた。

「凪っ!」

「っ!いやっ!」

飛び込んできた誰かは稲光で黒い影となり、一瞬で錯乱状態になった私は肩に触れる手を振り払った。

「っ…」

息を飲む誰かに怯え自分の体を抱き締めてるとパチッと電気が点いた。
急に明かるくなり目が慣れずに細めていると声をかけ私の前にひざまづいたのは鷹臣で頭が働かない私はそれを理解するのに数秒かかった。
雨の中を傘も差さずに来たのか見れば髪の毛は濡れスーツもしっとりと濡れている。

「凪…」


「…あ…たかおみ…」

掠れるような小さな声で呟くと鷹臣はホッとしたような顔で手を伸ばしてきた。
それに思わずビクリと肩を震わすと手は止まり戻っていく。

「…凪ごめん、みんな俺が悪いんだ。凪を守るはずが全部裏目に出てまた凪を傷つけた…」

両手を膝の上に置き頭を下げる鷹臣に小さく首を横に振るのが精一杯だった私は散々流した涙がまた込み上げてくる。
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