悔しいけど好き
拳がジンジンと疼くがそんな事気に止めるよりも、凪のすすり泣く声を耳にして、袴田に押さえつけられながらも気丈にしてた凪が、悲痛な悲鳴を上げるのが頭の中にこだまする。
耐えがたい凪に対する悪行にはらわたが煮えくり返り吐き気まで催した。
肩で息をし歯噛みする俺を見て正木部長は画像を止めた。

「落ち着け神城。これがあれば羽柴の口から説明しなくとも一目瞭然、言い逃れは出来ない。袴田専務が自分の言い分を終えて満足してる所にこれを見せたら絶句していた」

「え…?」

立ったまま正木部長を見下せば、不敵に笑い頬杖を突き俺を見据える。
悪魔的なその笑いに一瞬ぞぞっと背筋に冷たい物が走った。

「部長も人が悪い…」

山本さんがため息交じりに言って額を押えた。

「俺にとっても大事な部下を酷い目に合わせた奴を許すことはできない。これぐらいじゃ何のお灸にもならないがもしこじれて裁判となってもこっちが優位になる」

「部長…」

怒らせた肩がフッと力の抜け俺は項垂れる。
俺はそこまで気も回らず何もできなかったことが情けない。

「この画像はここにいる3人と社長、袴田専務以外には見せない。必要があれば弁護士には見せるだろうが画像が流出することはない、安心しろ。だが、この画像は他の決定的証拠も映ってる」

「え?」

再び部長を見れば目を細め俺を睨んでいる。
それは明らかに俺がしでかしたことを言っていて、ごくりと喉を鳴らし次の言葉を待った。

< 241 / 325 >

この作品をシェア

pagetop