悔しいけど好き
こんな喧嘩したいわけじゃないのに突いて出るのは文句ばかりで嫌になる。
言葉を止めようとふいっと目を逸らすと、鷹臣はあ~もう!と頭をガシガシと掻いた。

「じゃあいい、わかった!」

そう言って鷹臣はそっぽを向く私の左手を取った。
指輪は返してもらう!とでも言うのだろうかとびくりと肩を震わせ恐る恐る鷹臣を見ると、真正面から睨まれてヒッと声にならない悲鳴を上げた。
右手も掴まれてぎゅっと握られ上目使いで怒ってるだろう鷹臣を窺う。



「羽柴凪さん、俺と、結婚してください」

「…え?」

静かな声が降ってきてちょっと顔を赤くして視線をずらした鷹臣をぽかんと見やる。

「え?じゃないだろ?ちゃんとプロポーズしたぞ!返事は?」

「あっ!…はい」

早口で言う鷹臣に釣られて返事をすると何が起こったのか自分でわからなくて何度も瞬きした。
鷹臣はホッとした顔を浮かべ私を抱きしめる。

「いつも行き当たりばったりでゴメン。俺は凪が望むようなロマンチックなことは苦手だからさ…。でも少しは努力するから許してくれよ」

「ば…バカ…。不意打ちが多過ぎてどこをどう突っ込んでいいかわかんない…」

急に照れくさくなってしどろもどろで顔が真っ赤になる。
頬に触れる鷹臣の耳が負けず劣らず熱かった。
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