悔しいけど好き
ここぞとばかりに鬱憤をぶちまけたのをやれやれとでも言うように神城が言い聞かせてくる。

分かっている。
わたしは営業を外されアシスタントとして内勤を仰せつかった。
憧れの正木部長に。

正木部長33歳。若くして部長職に就くだけあって本人もやり手の営業マン。
彼の下について営業のノウハウを学び私なりに頑張ってきた。
なのに…

ーーーお前は営業に向いていない。来春からは神城のアシスタントに付けーーー

まるで死刑宣告のように冷たく言い放たれた言葉。


「なんであんたなの…?なんで…」

「おい、羽柴」

肩を掴み振り返らせようとした神城の手を振り払う。
我慢してきたものがプツリと切れた。

「なんで!?血を吐く想いで今まで頑張ってきたのに!なんで降ろされなきゃならないの!?なんであんたの下に付かなきゃならないの?酷い!酷過ぎる!」

台の上にあった資料を神城に投げつけ叫ぶ。

「おい!やめろ!」

「私が女だから?何か失敗した!?なぜっ!どんなに頑張ったってあんたに叶わないなんて!」

「落ち着け!」

暴れる私の手首を掴み抱え込まれた。
どんなに足掻こうとビクともしない神城の腕の中で力尽きへたり込む。

< 3 / 325 >

この作品をシェア

pagetop