悔しいけど好き
デスクに戻れば斜め前に座る凪はちらりとこちらを見てすぐに既に戻っていた安達と話し出す。
無視かよ?と、別に用事があるわけでもないのに憮然としてしまう。

けど、今まで俺達はこんな感じだった。
プライベートを隠すのがうまくなったというべきか、必要以上に話したりしないし、最近は言い合うことも無くなった。
意見が合うようになってきたからとも言えるがやはり周りに遠慮してるところもある。
周りに気を使わせ仕事がやりにくくなるのを一番心配してるのは凪だ。

でも既に俺達が付き合ってる時点で気を使われてる気がする。
それを今更気にしなくてもいいのではないか?
皆もわかっててあえて何も言っては来ないのだろう。
逆に稲葉のように違う心配かけてるかもしれない。
最近会社でよそよそしい態度をする凪を気にしながらもパソコンを立ち上げ仕事に取り掛かった。

そして…
「どうしたらいいんですか〜」と半べそをかく嶋田を叱咤し指導しつつ、自分で作った企画書は、苦手と言ってる嶋田よりも散々な出来だった。

これは久々に凪にどやされるな…。

何時間も掛けて作った企画書はお蔵入り。

「えー!なんで捨てちゃうんですか勿体ない!」

資料をパソコンのゴミ箱に葬ったのを見て騒ぐ嶋田に構わず頭痛のする額を押さえる。
だから仕事にプライベートを持ち込むなというんだ…ガックリ項垂れ反省するしかない。

ふと、何やら視線が…と思って目を上げたら正木部長と目が合った。

時間を無駄に使うなよ?この給料泥棒!

と、聞こえた気がする。
ああ、頭がイタイ。


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