悔しいけど好き
「あ、周くん」

「凪…」

困ったような複雑な笑みを浮かべ立っていた周くんにニコリと笑った。

「今日美波ちゃんは来てないんだよね?会いたかったな」

少し前に来てくれた正木夫妻に出来た赤ちゃん、3ヶ月になる巧君の可愛さにメロメロになった後だから、1歳になった美波ちゃんもきっと増々可愛くなってるんだろうなと想像してると周くんは苦笑いを浮かべる。

「凪は美波に会いたかったのか」

「うん、会いたかった。来てないのは残念」

ふうっとため息ついた周くんはやっぱり困った顔をして、スッと私の頬に触れた。

「凪、綺麗だよ。奴に取られると思うとやっぱり悔しいな」

「ふふっ、まだ心配?大丈夫だよ私が選んだ人なんだから」

「…ああ、そうだね。凪、幸せになるんだよ」

「うん」

二人で笑い合って、周くんのエスコートで教会の扉の前まで行くとお父さんが待っていた。
周くんは会釈し先に扉の中に入って行く。

お父さんと二人扉の前に立ち腕を組んだ。

緊張気味のお父さんを見てクスリと笑う。
さっき家族でいた時にお父さんとお母さんとおばあちゃんの前で慣例の挨拶をした。

お父さんお母さんおばあちゃん
今まで育ててくれてありがとうございました
凪はお父さんとお母さんの子で幸せでした
これからは鷹臣ともっと幸せになります

笑い涙するお母さんとおばあちゃんにもらい泣きしそうになってせっかくのお化粧が台無しになるとなんとか我慢した。
憮然としていたお父さんはうんと一つ頷いただけ。
それでも嬉しかった。
最後には少しさびしさの残る瞳で私に笑いかけてくれたから。

「お父さん…」

「ん…なんだ」

「大好き!」

「…っ!…ばかもの、泣かせるな」

グスッと鼻を鳴らして涙目になるお父さんを微笑ましく見つめた。

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