婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!

《あぁ…竜王様、こんなところでは…》

《…いいから、早く中に入れて》

《ええ、いつものように熱く抱いて下さいませ?》



…なぜ、こんな他人のお色気場面を追想しなければならないのでしょう。

余程、衝撃だったのでしょうか。



いやいや、確かにそうだ。

まさか、竜王様と朱嘉様の熱いキスと抱擁を出歯亀…いいえ、目撃することになるなんて、誰が思ったか。

本当に驚いた。身体密着して擦り寄せて。



でも…竜王様は朱嘉様のことを愛しているんだと、理解した場面でもあった。



っていうか、人目に触れる恐れのある廊下ではやめて下さい。

っていうか、何でこんな追想をしているのか。



それは、きっと。

本当に大好きだったからこそだ。



お兄様たちのところに遊びに来ている竜王様を見て、子供ながらに見惚れていた。

その美しい端正な顔立ちと、上品な佇まい。

それに、爽やかな笑顔。

まるで、おかあさまが読んでくれた本の中の王子様そのもので、素敵だと思った。

…憧れだった。
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