恋するオオカミ〜不器用だけと一途なんだよ!
「杏!」

思わず声がおおきくなる。

「碧斗。」

杏がこちらを向くと同時にその男、明石もこちらを見た。

一瞬の…間…。

俺と明石はしばらく睨み合っていた。

「ごめんね。明石くん。わたし今碧斗と帰るとこだったから。」

杏の無邪気な声に2人のピリピリした雰囲気が崩された。

明石が杏を見て笑った。

「そうなんだ?気をつけてね。また月曜日。学校で。」

そして、俺をひと睨みすると、サッと踵を返し駅から遠ざかる道を振り返らず早足で歩いて行く。

「杏。行くぞ。」

遠ざかる明石を見ていた杏だったけど、俺の声に我に返ったみたいにハッとこちらを見て、切符を俺に手渡した。

「うん。」

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