最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
成長してから初めて人前に出ることに緊張していたナタリアだったけれど、今までチェニ城で真面目に学んだおかげだろう、出席者たちとの挨拶も会話もなんなくこなすことができた。
会場の客たちはこぞってナタリアにお目通り願った。なにせ彼女は将来のスニーク帝国皇后だ、宮廷官はもちろん貴族ならば誰もが今のうちに顔を知っておいてもらいたい。
それに加え、老いも若きも男も女もナタリアという存在に興味津々だった。
床に伏せっていると聞いていたがいつ治ったのだろうか。作法や勉強はいつ習ったのだろうか。離宮でずっと暮らしていたらしいが、今の世界情勢をどこまで知っているのだろうか。客人たちの興味は尽きない。
そして何より、彼女の美貌に誰もが純粋に惹きつけられた。
さすがに次期皇帝の后候補として連れられてきたナタリアを堂々と口説く不届き者はいないけれど、男たちはこっそりと熱い視線を送り、挨拶の台詞に乗せて情熱的な賛辞を贈る。
イヴァンは微妙にそれが面白くなかった。
ナタリアを着飾らせ人前に連れてきたのはほかでもない自分だというのに、いざ男どもが彼女にうっとりするとやたらと胸がむしゃくしゃした。
自分は案外嫉妬深いのだなと、イヴァンは二十三歳にもなって初めて自分の心の狭さを知った。