最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
 
 
朝の光が閉じたまぶたの上をチカチカと掠める。

目覚めていく頭で、ナタリアはすぐそばにイヴァンの香りを感じた。

(――ああ、そうだわ。私……)

自分の寝床がキュクノス宮殿の寝室から本宮殿の夫婦の寝室に変わったことを思い出し、ナタリアの頭は目覚めの気怠さより言い知れぬ喜びでいっぱいになる。

しかし――。

「……イヴァン、さま……?」

開いた双眸に映ったのは、悲しそうに微笑んでナタリアを見つめているイヴァンの顔だった。

先に目覚めていたのだろうか。彼は起きてベッドに座った体勢で、ナタリアの髪を撫でていた。

(どうしてそんな悲しそうなお顔をするの……? まるで今にも泣き崩れてしまいそう……)

朝の白い光に縁どられたイヴァンの顔は美しく、けれども隠しきれない憂いに彩られている。

見ているだけで悲しみに胸が詰まりそうになりながらナタリアは体を起こし、そしてようやく昨夜の自分のことを思い出した。

(そうだわ。私――)
 
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