伝わらなかったあの日の想い
「え?
いいよ。もう子供じゃないし。
1人でちゃんと帰れるから。」

賢吾、どうしたの?
今まで、そんなことしたことないじゃない。

「お前、ほんとバカ。」

賢吾が呆れた声で言う。

ムッ

「バカって何よ!?」

私はいつものように戦闘態勢をとるけれど、

「子供じゃないから送るんだろ?
お前、自分のこと、男だと思ってるだろ。」

って、まさかの女の子扱い!?

だけど、一度とった戦闘態勢を簡単には崩せなくて、

「思ってるわけないでしょ!?
賢吾こそ、私が女だと知らないと
思ってたよ。」

と食ってかかる。

なのに、賢吾は、

「はいはい。
いいから、行くぞ。」

と軽くいなして、私の手を取って歩き出した。

え… 手…!?

賢吾と手を繋ぐなんて、それこそ、10年ぶりくらい。

賢吾は、私の手を引いて、無言でスタスタと歩いていく。
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